新規マウス表現型解析法の開発
マウスクリニックやIMPCプロジェクトに用いる網羅的表現型解析パイプラインは、International Mouse Phenotyping Resource of Standardized Screens (IMPReSS)に準拠した国際標準表現法により構築されています。多くの表現型を網羅的に解析できるようにデザインされていますが、研究コミュニティーや社会的要望は常に変化しています。マウス表現型解析技術室では、研究コミュニティーや社会的要望に応えるために、新規かつ国際標準と成り得る表現型解析法の開発を進めていきます。
Live Mouse Tracker
フランスパスツール研究所のde Chaumont等が開発した全自動社会行動解析装置です(1)。マウス個体を動物用RFID (Radio Frequency Identifier)チップで識別し、ケージ上部に取り付けられた距離画像センサ付きカメラデータを専用ソフトで解析します。
(1) de Chaumont F, Ey E, Torquet N, et al.
Real-time analysis of the behaviour of groups of mice via a depth-sensing camera and machine learning.
Nat Biomed Eng. 2019;3(11):930‐942. doi:10.1038/s41551-019-0396-1
テレメトリーシステムを用いた体温・心電の解析
マウスの体内に送信機を挿入して、体温や生体電位などの生理学的指標の測定を行います。非常に小型のワイヤレス送信機を用いるため、マウスが自由に活動している状態で測定を行うことが可能です。マウスクリニックではHome-cage Social Interaction testと組み合わせて実施することで、活動量や社会行動などの行動的指標の測定と同時に深部体温・心電などの生理学的指標の継時的測定を行っています。
イメージングパイプライン
イメージングパイプラインでは、X線CTイメージングを用いて、軟組織、骨の形態解析、ex vivo血管造影剤を用いた血管構造の解析の支援を行うパイプラインを実施しております。一般的なX線CTのみでは軟組織のコントラストが低いため、組織構造がほとんど観察できませんが、我々が開発した造影剤と組み合わせることにより高効率かつ高解像度で軟組織形態の観察が可能になります。また、非侵襲的な解析のため、サンプルを非破壊的に解析することができます。これらの3次元画像について、画像解析ソフトウェアを用いて特徴的構造の抽出、組織体積の定量化、骨密度などの生体が持つ形態情報の定量的な解析を支援しております。これらの技術は、IMPCにおける胚性致死変異体の形態解析に利用されており、高効率に胚全体を網羅的に解析できることから、遺伝子改変マウスの未知表現型の検出に役立っています。