第10回ANRRC国際会議参加報告
The Korea Science and Technology Center, Seoul, Korea -September 5 to 7, 2018-

バイオリソースを用いてアジア地域の科学、技術、イノベーションの振興に貢献することを目的に発足したAsian Network of Research Resource Centers (ANRRC: 会長Dr.Shuang-Jiang LIU, IM-CAS)の第10回国際会議が、2018年9月5日(水)から7日(金)にかけて、The Korea Science and Technology Center, Seoul, Koreaで開催されました。

本大会にはアジア各国のバイオリソース整備に携わる11カ国の研究機関から156名の関係者が参加し、52の口頭発表と52のポスター発表がありました。
次回11回(2019)大会はフィリピンで開催される予定です。


Plenary Lectures
座長 : Dr. Shuang-Jiang Liu (Institute of Microbiology, Chinese Academy of Sciences (IM-CAS), China)

歴代President 3名の先生方による基調講演が行われました。
Dr. Yeonhee Lee (Seoul Women's University, Korea) は、ANRRC設立の経緯と第7回までの国際会議,ANRRCを通じた人材育成を振り返りました。また、バイオリソースの品質標準に関係する規格ISO TC276やISO 20387についても概説し、 'certified BRCs' をめぐる今後の国際動向を注視すべきと論じました。
小幡 裕一 センター長(理研BRC,日本)は、UN Sustainable Development Goalsに焦点をあて、特に17のGoalsのうちANRRCの活動が貢献すべき7つを挙げ、ANRRCの各センターはこれらの目標達成に貢献するよう、事業および研究体制を再評価・再構成すべきと論じました。また、NGSを用いた高速シークエンシングおよびゲノム編集技術を取り上げ、特に昨今のゲノム編集技術の進展を概説しました。今後ゲノム編集技術を駆使して開発されたリソースを各リソースセンターで受け入れることが予想され、それらの受入態勢を整えるためにも、各センターがゲノム編集技術に習熟する必要性を論じました。
Dr. Shuang-Jiang Liu (IM-CAS, China) は、Microbiome研究の強力なツールとなるMicrofluidic streak plate法を取り上げ、マウスリソースに付随するMicrobiome研究の事例を紹介しました。特定の疾患をもつモデルマウスリソースを整備するとともに、そのMicrobiomeを構成する個々の微生物培養株もリソースとして整備する重要性を論じました。


S1. Biodiversity and ABS
座長 : Dr. ShyamKumar Sharma (CSIR-Institute of Himalayan Bioresource Technology, India) and Dr. Kyounghee Oh (National Institute of Biological Resources, Korea)

S1-1
Dr. Feng-Yan Bai (IM-CAS, China) から、極東アジアにおける酵母の多様性についての報告があった。
S1-2
Dr. Ai-Hua Li (IM-CAS, China) から、噴火口にできた湖に生息する、好気性非酸素生成型光従属栄養性細菌の多様性について報告があった。
S1-3
Dr. Kyounghee Oh (National Institute of Biological Resources, Korea) から、韓国における名古屋議定書対応の紹介があった。
S1-4
Dr. ShyamKumar Sharma (CSIR-Institute of Himalayan Bioresource Technology, India) から、アジアにおける名古屋議定書対応実施状況の紹介があった。
S1-5
Dr. Myunghyun Chung (Korea University Legal Research Institute, Korea) から、韓国における名古屋議定書対応の紹介があった。
S1-6
Dr. Honglada Thoetkiattikul (National Science and Technology Development Agency, Thailand) から、タイにおける名古屋議定書対応の紹介があった。
S1-7
鈴木 睦昭 博士 (国立遺伝学研究所,日本) から、名古屋議定書に対する日本での対応の紹介、Digital sequence informationに対する日本のコメントもあった。

S2. New Methodology & Application (Microbial Resources)
座長 : Dr. Lily Eurwilaichitr (National Center for Genetic Engineering and Biotechnology (BIOTEC), Thailand) and Dr. Maria Auxilia T. Siringan (Natural Science Research Institute, Philippines)

S2-1
Dr. Weerawat Runguphan (BIOTEC, Thailand) から、ゲノム編集技術を用いたバイオ燃料高産生微生物株の創出について報告があった。
S2-2
Dr. Bo Yu (IM-CAS, China) から、耐熱性Bacillus属菌を改変し有用化合物を産生させる研究についての報告があった。
S2-3
Dr. Maria Auxilia T. Siringan (Natural Science Research Institute, Philippines) から、イネ根圏の微生物群集から有用微生物を抽出しBio-fertilizerとして利用する試みについて報告があった。
S2-4
Dr. Lily Eurwilaichitr (BIOTEC, Thailand) から、タイ国内の豊かな微生物資源を新しい経済モデル(いわゆる 'Thailand 4.0' )の実現に利用するために、TBRCおよびBIOTECHがタイ国内で微生物研究のハブとして貢献していることを報告した。
S2-5
Dr. Sang-Seob Lee (Korea Environmental Microorganisms Bank, Korea) から、細菌群集を利用して環境汚染物質を含む排水を浄化するプラントの実用事例について報告があった。
S2-6
Dr. Marian P. De Leon (University of the Philippines Los Banos College, Philippines) から、洞穴性コウモリのグアノから検出されたヒト病原性細菌に抗生物質の多剤耐性が見出された研究成果について報告した。
S2-7
高島 昌子 ユニットリーダー(理研BRC, 日本)から、近年のRIKEN BRC-JCMの事業成果を報告するとともに、NBRPゲノム情報等整備プログラムのもとで解読・公開した真核微生物のゲノム情報とそれを利用した研究成果を報告した。

S3. ELSI Issues of Biobanking
座長 : Dr. Soo-Yong Tan (National University of Singapore, Singapore)

S3-1
Dr. Soo-Yong Tan (National University of Singapore, Singapore) から、Tissue bankが継続して事業を行なうための課題、特に患者から採取した貴重なサンプルは高額なため、これらを利用できない研究者がいる現状等について報告があった。
S3-2
Dr. Daniel Catchpoole (Biospecimens Research and Tumour Bank, Australia) から、The Children's Hospital at Westmead (Sydney) tumour bankにおける "patient engagement" である患者の積極的関与、特に患者がどの程度積極的に関与しているのかなどアンケート結果を示し、バイオバンクが重要な位置づけであること等について報告があった。
S3-3
Dr. Young Joo Cha (Human Serum Bank, Korea) から、韓国のHuman Serum Bank(HSB)が提供するサンプルはin vitro diagnostic devices (IVDs, 体外診断用医療機器)の開発に貢献していること等、HSBの実施している活動の報告や施設の紹介があった。
S3-4
Dr. Won Bok Lee (Ewha Law School, Korea) から、韓国における個人情報保護法や研究課題保護法などが、日本やアメリカの例を参考に定められたことの紹介があった。
S3-5
Dr. Marianna Bledsoe (International Society for Biological Environmental Repositories, USA) から、アメリカ合衆国におけるヒト生体試料の収集、保管や利用方法及びその規制や政策の概要、特に近年急速に発展している研究コミュニティに対応するため、昨年改定された "Common Rule" の概要とそれに関わる生体資料やバイオバンクの影響についての報告があった。

S4. China-Korea Joint Seminar: Zebrafish and Microalgae


S5. Standardization


S6. IT and Data Management
座長 : Dr. Juncai Ma (IM-CAS, China)

S6-1
Dr. Juncai Ma (IM-CAS, China)から、中国科学院、WFCC-MIRCEN 世界微生物データセンターで運用される微生物リソースのデータベース、Global Catalogue of Microorganisms (GCM)の進捗報告があった。
S6-2
キャンセル
S6-3
Dr. Supawadee Ingsriswang (BIOTEC, Thailand) から、タイ、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、ベトナムの研究施設が参加するASEAN Network on Micobial Utilizationが運営する東南アジアの微生物資源利用のためのデータベース、ASEAN Microbial databaseの進捗報告があった。
S6-4
Dr. Tae-Eun Jin (Korean Research Institute of Bioscience and Biotechnology, Korea) から、韓国におけるバイオリソースの統合データベースKorean Bioresource Information Systemの紹介があった。
S6-5
桝屋 啓志 ユニットリーダー(理研BRC, 日本)から、理研BRC の新たな情報整備計画に関して報告があった。

S7. New Methodology & Application (Plant & Animal Resources)
座長 : 小原 雄治 教授 (国立遺伝学研究所, 日本)、小幡センター長(理研BRC, 日本)

本セッションは8名の演者が登壇し、植物・動物リソースの最新の研究成果、および関連するゲノム編集技術や高速シークエンシング技術など、多岐にわたるトピックが紹介された。

S7-1
Dr. Won Keun Oh (Korea Bioactive Natural Material Bank (KBNMB), Korea) から、KBNMBにおける1万を越える植物抽出物・抽出分画のコレクションと利用事例について報告があった。
S7-2
安部 洋 研究員(理研BRC, 日本)から、理研BRC実験植物開発室におけるシロイヌナズナに対するゲノム編集技術の有効性の検討について報告があった。
S7-3
Dr. Marie Christine M. Obusan (University of the Philippines, Philippines)から、フィリピンにおける国を挙げた海獣保護の取り組みについて報告があった。
S7-4
野口 道也 開発技師(理研BRC, 日本)から、理研BRC細胞材料開発室におけるcell lineの動物種同定手法と品質検査の実状の紹介がった。
S7-5
小原 雄治 教授 (国立遺伝学研究所、日本)から、高速シークエンシング技術およびデバイスの変遷と各シークエンシング手法の長所・短所の概説があった。
S7-6
Dr. Hye Suck An (National Marine BioResources and Information Center, Korea) から、韓国における海洋生物資源センターMABRCの施設および事業の紹介があった。
S7-7
村田 武英 専任研究員(理研BRC, 日本)から、理研BRC遺伝子材料開発室における蛍光・発光タンパク質遺伝資源の収集について報告があった。
S7-8
フィリピン、University of the Philippines, Dr. Juan Carlos T. Gonzalezから鳥類(サイチョウ Hornbill)の皮膚標本を用いた絶滅種の分子系統解析や寄生シラミを同定するユニークな研究事例が紹介された。

S8. Laboratory Animal Resources
座長 : Dr. Yong Tian Professor (Institute of Biophysics, CAS, China), 小幡 裕一センター長(理研BRC, 日本)

S8-1
Dr. Qiang Sun (CAS Key Laboratory of Primate Neurobiology, CAS, China) から、疾患モデル動物となるマカク属サルの維持施設の紹介、MeCP2遺伝子を神経系特異的に強制発現するカニクイザル系統が自閉症様の表現型を持つこと、運動疾患や生物リズムに関連する遺伝子(Prrt2やBmal1遺伝子など)に変異を持つ系統のゲノム編集技術による樹立について報告があった。
S8-2
Dr. Jae-Won Huh (Primate Resource Center, Korea Research Institute of Bioscience & Biotechnology, Korea) から、施設・活動の紹介があった。
S8-3
Dr. Lai Liangxue (Guangzhou Institutes of Biomedicine and Health, CAS, China) から、ゲノム編集による神経変性疾患ミニブタモデルの開発について報告があった。
S8-4
Dr. Xiang Gao (Nanjing Biomedical Research Institute, Nanjing University, China) から、ゲノム編集疾患モデルマウスの整備と国際連携について紹介があった。
S8-5
Dr. Yong Tian Professor (Institute of Biophysics, CAS, China) から、マウス非コードRNAの機能解析についての報告があった。
S8-6
吉木 淳 室長(理研BRC,日本)から、理研BRCにおけるマウスリソースの整備と国際マウス表現型解析コンソーシアム(IMPC)および国内疾患研究コミュニティとの連携について報告があった。
S8-7
Dr. Je Kyung Seong (Seoul National University, Korea) から、韓国の遺伝子改変マウスの作製、表現型解析プラットフォーム整備について発表があった。

General Assembly / Closing

  • Dr. Shuang-Jiang Liu (IM-CAS, China)がANRRC会長を2019年9月まで続けるとの報告があった。
  • 次回11回(2019)大会はフィリピンで開催されること、12回(2020)大会はタイで開催されることが報告された。
  • 今年度のポスター賞が下記の三人に送られることが発表された。
    1. Natalie Gabrael (The Tumour Bank, The Children's Hospital at Westmead, NSW, (Australia))
    2. Ha Thanh Tung Pham (Korea Bioactive Natural Material Bank, Seoul National University (Korea))
    3. Chang Liu (Institute of Microbiology, Chinese Academy of Science (China))

出張者:小幡 裕一 センター長、吉木 淳 室長、高島 昌子 ユニットリーダー、桝屋 啓志 ユニットリーダー、村田 武英 専任研究員、安部 洋 専任研究員、野口 道也 開発技師、遠藤 力也 開発研究員、尾前 二三雄(記)


anrrc 2018 集合写真
集合写真