活性酸素の精子幹細胞に対する増殖促進作用を解明

BRC遺伝工学基盤技術室の協力した研究成果が、2013年6月6日、科学誌「Cell Stem Cell」上で論文発表されました。

この論文は、京都大学医学研究科の篠原隆司 教授、森本裕子 研究員らの研究グループによる成果で、BRCからは、遺伝工学基盤技術室 小倉淳郎 室長、井上 貴美子 専任研究員、越後貫成美 専任技師が協力しています。

本研究成果の概要は、京都大学からのお知らせをご参照下さい。
    >> 2013年6月7日活性酸素の精子幹細胞に対する増殖促進作用を解明 — 京都大学

本研究の中で、BRCは、過酸化酸素で長期間培養された幹細胞からの顕微授精による個体化と、個体化したマウスの正常な発育の確認を担当しました。

顕微授精による個体化
顕微授精の様子。ピペットを用いて精子を卵子へ注入する。
(図)顕微授精の様子。ピペットを
用いて精子を卵子へ注入する。

通常、精巣で作られた精子は、精巣上体という器官へ運ばれ、精巣上体で、運動性を獲得します。これが、自然受精のために必要な条件の一つです。

今回、実験に用いられた精子は、マウスの体外で長期間培養された精子幹細胞を、精巣に戻し、そこから得られた精子でした。このような場合は、十分な数の精子が精巣上体へ移行することができず、自力での受精は困難で非効率です。

そこで、BRC遺伝工学基盤技術室では、精巣内から未熟な精子を採取し、その精子を卵子へ直接注入する「顕微授精」という方法を試みました。「顕微授精」は、採取した卵子・精子を単に同じ場所に置いておくのではなく、人為的に精子を卵子へ注入するものです。特にマウスでは難易度が高く、実施できる研究室は国内で10箇所に満たないと言われています。

今回は、この「顕微授精」によりマウス産子を獲得することに成功し、通常の産子と同様に約20日で離乳し、成体まで発育しました。

バイオリソースセンターでは、繁殖の難しいマウス系統も多く扱っており、それらをより正確・確実に扱うために、今回のような技術の向上に努めています。

また、今回の研究で使われたマウス精巣由来幹細胞(AES0002 : GS-DG1)は、バイオリソースセンター細胞材料開発室より入手できます。

論文情報

Morimoto Hiroko, Iwata Kazumi, Ogonuki Narumi, Inoue Kimiko, Ogura Atsuo, Kanatsu-Shinohara Mito, Morimoto Takeshi, Yabe-Nishimura Chihiro, Shinohara Takashi.

ROS Are Required for Mouse Spermatogonial Stem Cell Self-Renewal.

Cell Stem Cell, Volume 12, Issue 6, 6 June 2013, Pages 774-786