第140回BRCセミナーのお知らせ

PD-1とがん、そして自己と非自己の識別

日時:2017年3月8日(水) 16:00~17:00

場所:バイオリソースセンター1階 森脇和郎ホール

講師:石田 靖雅 先生
奈良先端科学技術大学院大学
バイオサイエンス研究科・准教授

要旨

ポスター(PDF版)
第140回BRCセミナーのお知らせ

「PD-1は偶然発見された」(PD-1 was discovered accidentally)と言われることが多い。しかし、今から25年前に私が敢行したのは、気楽な「あみだくじ」でも「ルーレット」でもなく、免疫学における自己-非自己識別の秘密を解き明かすための、極めて厳密(stringent)な分 子生物学的スクリーニング実験であった。当時私は、「自己に対する反応性を獲得した危険なTリンパ球が programmed death (apoptosis) によって死滅する際に働く遺伝子」を同定すれば、自己-非自己識別の謎に迫ることができるに違いないと考えたため、新たに発見された(たったひとつの)遺伝子がそのようなものであって欲しいという願いをこめて、programmed death-1 (PD-1) と命名した。しかし、その後の研究により、PD-1はT細胞にprogrammed death を引き起こす分子ではなく、抗原によるT細胞の活性化を負に制御する分子であることが明らかになった。つまり、PD-1という名前は、同分子の生理機能を的確に表現したものではなかったのである。私は、自らが発見した遺伝子(分子)に誤った名前を与えてしまった愚かな名づけ親である。しかし大変興味深いことに、最近の一連の研究とその臨床応用からは、抗体によってPD-1やそのリガンド分子の働きを阻害し、T細胞を抑制状態から解放するだけで、一部の癌細胞に対する免疫応答が著しく増強されることが示され、PD-1は「細胞死の誘導」とは全く異なる分子メカニズムによって、免疫学的な自己と非自己の識別に深く関与することが次第に明らかになってきた。「PD-1は偶然発見されたのか、それとも必然的に発見されたのか?」という議論に現時点で終止符を打つことは難しいが、自己-非自己 識別の秘密を解き明かしたい!という当初の私の執念は、少なくとも部分的には、実を結んでいたのかも知れない。

連絡先:マウス表現型解析開発チーム 若菜 茂晴 (029-836-9013)

申込みは不要です。