精子無力症の原因となる糖転移酵素様遺伝子を発見

BRC遺伝工学基盤技術室の協力した研究成果が、2014年1月7日、米国の科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」(米国科学アカデミー紀要)オンライン版で論文発表されました。

この論文は、産業技術総合研究所糖鎖医工学研究センターの成松久 研究センター長、同マーカー探索技術開発チームの髙﨑延佳 招聘研究員らの研究グループによる研究成果で、BRCからは、遺伝工学基盤技術室 小倉淳郎 室長、井上貴美子 専任研究員、越後貫成美 専任技師、持田慶司 専任技師が協力しています。

本研究成果の概要は、産業技術総合研究所からのお知らせをご参照下さい。

    >> 2014年1月9日 精子無力症の原因となる糖転移酵素様遺伝子を発見
             -精子形成に関わる重要な遺伝子の発見-

本研究の中で、BRCは、ヘテロ接合体としてGalntl5遺伝子の一方を欠損させたオスのマウスの生殖細胞の機能解析と顕微授精を担当しました。

1) マウス生殖細胞の機能解析

ヘテロ接合体としてGalntl5遺伝子の一方を欠損させたマウス(Ht)では、雄性不妊の症状が確認されていたため、BRC遺伝工学基盤技術室では、まず、精子の形態と運動能を測定しました。

その結果、正常なマウス(Wt)と比較して、以下の違いが明らかになりました。

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2) 顕微授精

BRC遺伝工学基盤技術室では、Htマウスについて、精巣内から未熟な精子を採取し、その精子を卵子へ直接注入する「顕微授精」という方法を試みました。

「顕微授精」は、採取した卵子・精子を単に同じ場所に置いておくのではなく、人為的に精子を卵子へ注入するものです。

今回は、この「顕微授精」によりマウス産子を獲得することに成功し、通常の産子と同様に約20日で離乳し、成体まで発育しました。

これにより、Htマウスにおける不妊の原因が、精子の質や量によるものであることが確認できました。

「顕微授精」は、特にマウスでは難易度が高く、実施できる研究室は国内で10箇所に満たないと言われています。バイオリソースセンターでは、繁殖の難しいマウス系統も多く扱っており、それらをより正確・確実に扱うために、今回のような技術の向上に努めています。

3) 論文情報

Nobuyoshi Takasaki, Kouichi Tachibana, Satoshi Ogasawara, Hideki Matsuzaki, Jun Hagiuda, Hiromichi Ishikawa, Keiji Mochida, Kimiko Inoue, Narumi Ogonuki, Atsuo Ogura, Toshiaki Noce, Chizuru Ito, Kiyotaka Toshimori, Hisashi Narimatsu.
A heterozygous mutation of GALNTL5 affects male infertility with impairment of sperm motility
Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS), doi: 10.1073/pnas.1310777111