MCD1 J

疾患ゲノム動態解析技術開発チーム

Mammalian Genome Dynamics
理化学研究所バイオリソースセンター

プロフィール

我々のチームでは,バイオリソースセンターに収集された生物遺伝資源の生物学的特徴や遺伝的性質など,系統個々の特性情報を収集するための解析技術の開発,それらの情報を利用したリソースの有効利用法の確立を行っています。例えば,我が国で開発された日本産亜種マウス由来系統から新たなバイオリソースを開発し,ゲノム情報を取得するとともに,これらの研究資源を利用した機能ゲノム解析技術の確立を行います。また,マウス胚から得られる「多能性細胞」「生殖系列」という重要な細胞系譜をモチーフとし,発生の遺伝プログラム,エピジェネティックプログラムに関して,様々な角度から研究を行っています。生殖系列の細胞は、次世代にゲノム情報を伝達するという重要な生物学的役割を持っています。また,ゲノムに蓄積されたエピジェネティックな修飾を次代に持ち越さないような仕組み,すなわちゲノムを「若返らせる」能力も合わせ持っており、ゲノムの再プログラム化現象の解析や幹細胞研究のためにも好個の材料といえます。しかし,その発生の全体像の解析は,技術的な問題もあり,未だ不明な点が多く,我々は新しい方法論の確立を通じて,哺乳類初期発生プログラム,ゲノム再プログラム化過程の解明を試みています。さらに,世代間を伝達するエピジェネティック変異の実態,その生物学的意義,疾患発症との関連を追究する研究への展開も計画しています。手法としては,遺伝子改変動物を材料としたバイオイメージングや遺伝子機能解析,マイクロアレイ,次世代シークエンサー等のゲノム解析手法,新規に樹立した幹細胞や実験動物などを利用した多角的,かつオリジナリティの高い研究を行うことをモットーとしています。

技術開発


・ 変異マウスを用いた個体レベルの遺伝子機能解析技術 (自然突然変異マウス,ノックアウトマウス,トランスジェニックマウス)

・ 特定細胞系譜の視覚化,単離と微量遺伝子解析技術の開発
(細胞特異的レポーターマウス,マイクロアレイ、次世代シークエンサー)

・ 胚性幹細胞系譜におけるゲノム修飾による発現制御機構の解析
(新規幹細胞樹立,DNAメチル化可視化技術、エピゲノム解析技術開発)

・ 野生マウス系統を用いた機能ゲノム解析技術の開発
(BACライブラリー,BACトランスジェニックマウス,SNP解析技術)

・ 蛍光生体イメージングによる個体レベルの生体機能解析技術の開発
(蛍光レポーター発現マウス,生体内顕微鏡)


研究プロジェクト


1. マウスt-コンプレックスにマップされる突然変異マウスを用いた哺乳類発生の遺伝学的解析 

2. 胚性未分化細胞・生殖細胞の可視化、同定、純化とゲノムワイド遺伝子発現解析 

3. ゲノム再プログラム化過程におけるゲノム修飾および非翻訳RNAによる発現制御機構の解析

4.日本産亜種マウス系統由来のバイオリソースを用いた機能ゲノム解析

1. 多能性細胞である原始外胚葉の増殖・分化に異常を示す突然変異体の解析


tw5mutant.psd(a; 正常胚、b; 突然変異胚)

tclw5変異は,マウスt-コンプレックス領域にマップされる劣性胚性致死変異であり,着床後,原始外胚葉の増殖・分化に異常を呈して致死となる。図に示すようにtw5変異体では原始外胚葉(em)がほとんど欠損していることがわかる。原始外胚葉は外胚葉,中胚葉,内胚葉を生み出す多分化能を持つ未分化細胞である。これまでの解析から,この変異の責任遺伝子であるVps52は細胞間相互作用を介して原始外胚葉の増殖・分化を制御することが明らかとなっている。



2. 胚性多能性細胞、胚性生殖細胞の可視化、単離と包括的遺伝子発現解析

年報figE.jpg
哺乳類初期発生においては,多分化能を持つ胚性細胞から分化した体細胞と生殖細胞が形成される。生殖系列で最も最初に現れる始原生殖細胞は精子や卵子の元となる細胞である。しかし,始原生殖細胞からはEG細胞というES細胞によく似た幹細胞を樹立することが可能であり,分化しつつも多分化能を発揮する能力を維持していることがわかる。我々はこの興味深い細胞系譜における遺伝子発現,そのエピジェネティック制御機構の解明のため,一連の新技術を開発し,解析を行っている。


DNAメチル化可視化技術による細胞核内動態の解析


mbdpdf2.psd発生分化の過程では,DNAやヒストンの修飾が劇的に変化すると考えられ,また細胞核自体の構造やヘテロクロマチンの形成パターンもそれに呼応して変動すると思われる。しかし,その動態を可視化し,追跡するのはこれまで困難であった。我々はメチル化DNA結合たんぱく質とGFPの融合遺伝子を作製し,ES細胞に導入した。これにより一個の生きた細胞の分化過程でのDNAメチル化,ヘテロクロマチンの構築等の核内動態の変化の追跡が可能となった。

logo5.psd

研究室のロゴ。研究対象であるマウスとマウス胚 ( Egg cylinder )を表す。

fig6b.pdf

マウスのライフサイクルと初期発生・生殖細胞の発生プロセス

member11.JPG



 メンバー(2009. 4 - )

  • チームリーダー   阿部訓也
  • 開発研究員     杉本道彦
  • 特別研究員     志浦寛相
  • 客員研究員     沼田興治
  • テクニカルスタッフ 近藤昌代
  • テクニカルスタッフ 古賀裕美子
  • 国際プログラムアソシエイト Jolynn Khoo
  • 大学院生      矢野倉 恵
  • アシスタント    草山美和子
  • 研究生       三瀬名丹
  • 研究生       曹 麗琴



連絡先; e-mail

abe at rtc.riken.jp

大学院生募集

筑波大学大学院生命環境科学研究科情報生物学専攻
動物発生遺伝学分野

筑波大学大学院 生命環境科学研究科