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ヒトES細胞等からの生殖細胞の作成に関する指針の公布・施行について

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 ヒトES細胞、ヒトiPS細胞及びヒト組織幹細胞(以下「ヒトES細胞等」という。)からの生殖細胞の作成に関し、文部科学省から「ヒトES細胞の使用に関する指針」及び「ヒトES細胞の樹立及び分配に関する指針」の改正並びに「ヒトiPS細胞又はヒト組織幹細胞からの生殖細胞の作成を行う研究に関する指針」が本年5月20日(木)に公布・施行されました。

  みなさまご存じの通り、我が国におけるヒトES細胞を用いた研究はすべて、文部科学省「ヒトES細胞の使用にする指針」に沿って実施されています。これまでの指針では、ヒトES細胞からの生殖細胞の作成研究は禁止されていました。これは当時(平成13年)、ES細胞由来の生殖細胞によって個体産生が行われる可能性を考慮したためとされています。そして同様に、ヒトiPS細胞からの生殖細胞作成も当時(平成20年)の局長通達によって実施されていません。

 しかしもちろん、in vivo由来の材料を用いることが困難であるヒト生殖細胞研究を、これらの多能性幹細胞を用いてin vitro で行う科学的な意義が大きく、ヒト生殖関連疾患の診断・治療に役立つことが期待されます。そこで多くの専門家の意見聴取と議論を経て、今回、指針の改訂により生殖細胞の作成が解禁されました。ヒトiPS細胞や組織幹細胞からの作成も同様に別の指針で解禁されました。

 ただし、今回の改訂にあたり、これら幹細胞由来の生殖細胞を用いてヒト胚を作成することは禁止されています。この「胚」は受精胚ですので、受精をさせてはいけないということになります(単為発生胚を作成することは問題ありません)。これには多くの議論があったところですが、基本的には「研究材料として使用するために新たにヒト胚は作成しない」という総合科学技術会議意見(平成16年)に沿ったものです。その他にも、実験動物における生殖細胞作成研究の報告とその再現性、指針整備に要する期間、胚作成によって得られる情報量、等々も加味し、今回の結論に達しました。

 ヒトES細胞使用研究の手続きは、すでに昨年、簡素化されています。よって生殖細胞作成の研究開始も、機関内倫理審査を経て機関長の了承後に、文部科学大臣に届け出る(審査ではありません)ことになります。文部科学省ではヒトES細胞の樹立・研究利用に関するHPを公開していますので、http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/hito_es.html よろしければそちらもご覧下さい(「手引き」や「Q&A」がわかりやすくできていると思います)。

 マウスやサルなどの実験動物を用いた生殖細胞研究はこれまで通り制限はありません。よって、本特定領域のほとんどの方には今回の指針改訂は直接の影響は無いと思います。しかしヒト生殖細胞の体外作成研究が解禁された現在、その基礎となるべき「正常な」生殖細胞発生の機構解明を着実に進めることがますます重要になってくるのではないでしょうか。

理化学研究所バイオリソースセンター
遺伝工学基盤技術室長 小倉 淳郎

文部科学省 特定領域研究 「生殖系列の世代サイクルとエピゲノムネットワーク」
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