→ 24日プログラムへ

→ 発表要旨へ

→ プログラム PDF版(388KB)

      

 

第19回 哺乳動物遺伝学研究会 プログラム

開催日時: 平成16年6月23日(水),24日(木)
場  所: 6月23日 独立行政法人理化学研究所 
筑波研究所 バイオリソース棟1階大会議室
  6月24日 ホテル 青木屋
(〒300-4352 茨城県つくば市筑波753-1)

23日  発表者名をクリックすると発表要旨を見ることができます。
13:00~13:25 豊田 哲郎 (理研GSC)
     「統合GeneticsのためのBioinformatics」
   
13:25~13:50 神沼 英里 (理研GSC)
     「表現型解析とマッピングのためのBioinformatics」
   
13:50~14:15 谷本 啓司 (筑波大学生命環境科学研究科)
     「大腸菌人工染色体 (BAC) 導入マウスを用いた循環器系遺伝子の
      転写制御メカニズムの解析」
   
14:15~14:30 休憩
   
14:30~14:55 岡 彩子 (国立遺伝学研究所)
     「生殖隔離の遺伝的メカニズムの解明 ~マウス亜種系統間にみられる
      Hybrid Breakdown現象からのアプローチ~」
   
14:55~15:20 澤村 京一( 筑波大学)
     「種間モザイクゲノムの利用:ショウジョウバエを例として」
   
15:20~15:45 佐渡 敬(国立遺伝学研究所)
     「X染色体不活性化センターにおけるアンチセンス制御」
   
15:45~16:00 コーヒーブレイク
   
16:00~16:20 桝屋 啓志(理研GSC 動物ゲノム機能情報研究グループ)
     「ENUミュータジェネシスにおける形態スクリーニングと
       エナメル質形成異常変異体」
   
16:20~16:50 小幡 裕一/吉木 淳 (理研BRC)
     「理化学研究所バイオリソースセンター理念と活動状況」
   
17:00 青木屋へ移動
   
19:30~21:00 夕食

このページのトップへ

 

第19回 哺乳動物遺伝学研究会 プログラム

24日 

発表者名をクリックすると発表要旨を読むことができます。

9:00~ 9:30 柳澤 純(筑波大学大学院生命環境科学研究科)
     特別講演
     「核内レセプターの転写制御機構」
   
9:30~ 9:45 高橋 阿貴(国立遺伝学研究所マウス開発研究室、総研大)
     「野生由来マウスの多様性を利用したオープンフィールド行動の遺伝的解析」
   
9:45~10:00 丸山 正樹・木南 凌
(新潟大学教育研究院医歯学系遺伝子制御講座分子生物学分野)
     「放射線誘発マウス胸腺リンパ腫の感受性遺伝子Mtf-1の同定」
   
10:00~10:15 高林 秀次・加藤 秀樹(浜松医科大学 動物実験施設)
     「クローズドコロニーマウスに内在する自然突然変異遺伝子の探索研究」
   
10:15~10:30 休憩
   
10:30~10:50 田中 宏光 (大阪大学 微生物病研究所 動物実験学)
共同研究者: 井口尚子, 外山芳郎*, 喜多村晃一, 高橋徹,
 かせ田一宏, 前川眞美子*, 西宗義武 
(*千葉大学 医学部 発生・再建医学研究部門)
     「精子鞭毛蛋白質Tektin-t遺伝子欠損マウスの解析」
   
10:50~11:10 吉田 松生  (京都大学大学院医学研究科  腫瘍生物学)
     「未分化型精原細胞の可視化と系譜追跡によるマウス精子形成の解析」
   
11:10~11:30 山縣 一夫(筑波大学大学院生命環境科学研究科)
共同研究者: 山下美鈴、山崎大賀、小口 憩、丸山靖子、
 馬場 忠(同所属)
     「バイオイメージングによるマウス受精卵子内イベントの可視化」
   
11:30~11:50 金田 正弘・佐々木 裕之(国立遺伝学研究所)
     「ゲノムインプリンティング確立におけるde novo DNAメチル化酵素
      Dnmt3a,Dnmt3bの役割」
   
11:50~12:30 河野 友宏(東京農大)
     特別講演
     「雌核発生マウス誕生へのアプローチ」


このページのトップへ

第19回 哺乳動物遺伝学研究会 発表要旨

 

豊田 哲郎 理化学研究所 ゲノム科学総合研究センター,ゲノム情報科学研究グループ 
ゲノム知識ベース研究開発チーム
「統合GeneticsのためのBioinformatics」
 近年のゲノミクスの発展によって、膨大な量の公開データとバイオリソースの蓄積が進行している。これらをバイオインフォマティクスによって統合化すれば、より効率的な原因遺伝子探索のストラテジーを作り出すことが可能である。 本発表では、「Forward Genetics」、「Reverse Genetics」、「Data Integration」、「Estimation of Candidate Genes」を連携させた「統合Genetics」としてのシステムをご紹介する予定である。 本システムは GPS: Genome Phenome Superhighwayという名称で、下記のURLでサービスを行っている。(プログラムへ)
 
神沼 英里 理化学研究所,ゲノム科学総合研究センター ゲノム情報科学研究グループ 
ゲノム知識ベース研究開発チーム
「表現型解析とマッピングのためのBioinformatics」
 理研GSCでは、遺伝子機能を同定する為にモデル動物(マウス)やモデル植物(シロイヌナズナ)の突然変異体が生成されている。変異体候補の個体は、現在、目視による手作業でスクリーニングされており、微妙な形質の変化を検出することは困難である。本発表では、3次元表面形状計測に基づいてin silicoで形状形質の抽出・スクリーニングを行う手法を、シロイヌナズナを例に紹介する。また、形質の遺伝子候補領域の推定(形質マッピング処理)において、大規模プロジェクトでは精度-効率のバランス問題が発生する。マーカ遺伝子型のタイピング結果を尺度化し、一定の精度を保ちつつ形質マッピング処理の効率向上を図る方法を紹介する。(プログラムへ)
 
谷本 啓司 筑波大学大学院生命環境科学研究科
「大腸菌人工染色体 (BAC) 導入マウスを用いた循環器系遺伝子の転写制御メカニズムの解析」
 血圧制御に関与するレニン・アンジオテンシン系の律速酵素:レニン(REN) や基質:アンジオテンシノーゲン (AGT) の遺伝子は、生体における様々な生理条件に応答してその発現量が変化する。特に AGT の発現量と血圧との間には関連があることが報告されており、これら遺伝子の発現制御メカニズムを理解することは、血圧恒常性の維持や高血圧の発症を理解する上で重要である。我々はこれまでに、ヒト・AGT 遺伝子やマウス・REN 遺伝子の転写制御候補領域に関する報告をおこなってきた。しかし、これらは培養細胞を用いた実験系で明らかにしたものであり、生体内における役割は未だわからない。また、培養細胞を用いた実験系ではこれら遺伝子の転写制御に大きな影響を与えると考えられる「血圧」等の生理条件を再現することは困難である。そこで我々は、AGT や REN 遺伝子転写制御候補領域のうちのいくつかについて、マウス個体を用いることにより生体内における機能、すなわち転写活性化能や組織特異性への関与、さらには生理条件への応答能等の検証を行っている。マウスを用いて野性型、及び変異型導入遺伝子の発現量の比較を行う際には「位置効果」が問題となる。我々は、巨大遺伝子である BAC を用いること、また Cre-loxP 反応を利用してマウス染色体上の同位置に比較したい2つの遺伝子 (野生型及び変異型) を組み込む (coplacement) ことにより、これを回避することとした。これにより、導入遺伝子の正確な発現量の比較が可能となる。今回は、同手法により明らかとなった、AGT や REN 遺伝子の転写制御領域の生体内における機能に関して紹介させていただきます。(プログラムへ)
 
岡 彩子 国立遺伝学研究所 哺乳動物遺伝研究室
「生殖隔離の遺伝的メカニズムの解明 ~マウス亜種系統間にみられるHybrid Breakdown現象からのアプローチ~」
 生物の集団間の遺伝子交換を不可逆的に阻止する生殖隔離現象は、動植物を問わず広く観察されているが、それに関わる遺伝子やその分子メカニズムについては、不明なことが多い。我々は、欧州産野生マウス由来の標準的近交系統であるC57BL/6J系統(Mus musuculus domesticus)を遺伝的背景として、日本産野生マウス由来のMSM系統(Mus musuculus mollosinus)のX染色体を導入した染色体置換系統(コンソミック系統)で、雄に生殖能力の低下が見られることを発見し
た。これは、MSM系統由来のX染色体上の遺伝子と、C57BL/6J系統由来の常染色体(もしくはY染色体)上の遺伝子が、雄の生殖関連の機能において協調して働くことができないためと考えられる。表現型解析の結果、これらの雄は精子頭部形態に顕著な異常があり、in vitroの実験から受精に障害があることが明らかとなった。そこで、精子頭部の形態異常について、Quantitative Trait Loci (QTL)解析法を用いて原因遺伝子のマッピングを行った。その結果、X染色体上の3箇所に原因遺伝子の存在する可能性が示された。また、X染色体上の原因遺伝子と相互作用する、常染色体(あるいはY染色体)上の遺伝子についても同様の解析を行なったところ、1番染色体と11番染色体に関連遺伝子が存在する可能性が示された。X染色体コンソミック系統雄の表現型の特徴が、精子頭部の顕著な形態異常であることから、これら3本の染色体にまたがる遺伝子群は、精子完成期に精子頭部の形態形成に関わっている可能性がある。(プログラムへ)
 
澤村 京一 筑波大学大学院生命環境科学研究科
「種間モザイクゲノムの利用:ショウジョウバエを例として」
 (亜)種間マウス雑種に由来するリコンビナントインブレッド(RI)系統が、さまざまな遺伝子のマッピングに有用であることは、皆さんご存じの通りである。もう1つのモデル生物であるショウジョウバエでも、同様の系統があれば便利であろう。キイロショウジョウバエとオナジショウジョウバエの雑種は不妊(しかも性特異的に致死)であり、RI系統作製は不可能であった。本講演では、これにチャレンジしてきた研究の歴史を振り返る。また、最近はじめた小熊讓、松田宗男両博士との共同研究(アナナスショウジョウバエとパリドーサショウジョウバエの単為生殖を利用した種間モザイクゲノム系統の確立)についても紹介する。これらの系統は特に配偶行動を規定している遺伝子のマッピングに有用である。(プログラムへ)
 
佐渡 敬 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所 人類遺伝  科学技術振興機構 さきがけ研究
「X染色体不活性化センターにおけるアンチセンス制御」
 哺乳類のメスにおける,X染色体不活性化には細胞遺伝学的に同定されたX染色体不活性化センター(Xic)が必須で,不活性化はこの領域で始まり染色体の両方向へと広がっていくと考えられている.XicにマップされるXist遺伝子は不活性化に必須で,細胞分化にともない不活性されるX染色体から発現される.その転写産物は,プロセッシングを受けた17kbのnon-coding RNAで,自身を発現するX染色体のほぼ全域にわたってシスに結合する.Xist RNAは,ヘテロクロマチン化に関わるタンパク質をX染色体へリクルートすることに重要な役割を果たすと考えられる.このXist遺伝子座には,その転写単位を完全に含むアンチセンスRNA,Tsixが存在する.Tsixもまた,Xist同様プロセッシングを受けるnon-coding RNAと考えられる.我々は,Tsix欠損マウスの解析から,Tsix はXistの発現をシスに制御する因子であることが明らかにしたが,その分子機構は依然不明である.現在我々は,新たなXist/Tsix領域改変マウスを作成し,TsixによるXistのアンチセンス制御機構の解析を行っている.本研究会では,その近況について紹介する.(プログラムへ)
 
桝屋 啓志 理研GSC 動物ゲノム機能情報研究グループ
「ENUミュータジェネシスにおける形態スクリーニングとエナメル質形成異常変異体」
 理研GSCにおける、マウスENUミュータジェネシスプロジェクトでは、新規突然変異を誘発し、これらを表現型スクリーニングにより抽出する、いわゆる「Phenotype Driven」な方法で突然変異コレクションを行っている。この方法の利点の一つとして、ある特定の遺伝子および遺伝子カスケードに属する複数の突然変異アリルを網羅的に抽出できる点がある。当プロジェクトでは、行動および生活習慣病をメインのターゲットとして数多くの表現型スクリーニングが設定されているが、中でも最も基本的なスクリーニングとしてModified-SHIRPA法を開発し、運用している。これは行動の簡易スクリーニング法である"SHIRPA"を形態の異常にも対応できるように拡張したものである。これにより、(行動も含めた)外見に現れる異常を網羅的に抽出できる。今回はModified-SHIRPAによる優性表現型スクリーニングの結果の概要を紹介する他、このスクリーニングによって得られたエナメル質形成異常変異体について報告する。
 Modified-SHIRPAによって、歯の表面に異常をきたす複数の突然変異が得られた。これらのうち2種類のタイプの表現型に分類される3つの突然変異体はマウス第5染色体にマップされ、塩基配列解析により、それぞれEnamelin (Enam)遺伝子にDNA塩基置換があることが確認された。スプライシング異常によりEnamのmRNA分解を誘発するM100521変異は機能欠失型変異と予想され、ヘテロではhypomaturation typeのエナメル質形成不全症(Amelogenesis Inperfecta: AI)に類似した表現型を示し、ホモではエナメル質の完全な欠損を示す。アミノ酸塩基置換をもたらすM100395およびM100514のヘテロ接合体はLocal hypoplastic type AIに似た症状を示す。今回の解析でエナメル質形成にEnam遺伝子が不可欠であることが示された他、変化に富んだ臨床所見を示すヒトAIの遺伝的基盤を明らかにする上で、これらのマウスが極めて有効であることが示唆される。(プログラムへ)
 
柳澤 純 国立大学法人筑波大学大学院生命環境科学研究科
「核内レセプターの転写制御機構」
 核内レセプターは、細胞内に存在するリガンド応答性の転写因子であり、発生・分化・生体の維持などさまざまな局面において重要な役割を担っている。核内レセプターはリガンドの結合によって、多くの蛋白質と相互作用し、その機能を発揮することが明らかとなりつつある。(プログラムへ)
 
高橋 阿貴 国立遺伝学研究所マウス開発研究室、総研大
「野生由来マウスの多様性を利用したオープンフィールド行動の遺伝的解析」
 野生由来マウス系統は、様々な土地から捕獲された野生マウスを近交化することで樹立された系統である。そのため、系統間の遺伝的多型が富んでおり、遺伝的マッピングに適していると考えられる。本研究はこれら野生由来マウス系統群10系統と、実験用マウス系統であるC57BL/6J、そして愛玩用マウス系統のJF1を用いて、オープンフィールド行動の解析を行った。オープンフィールドとは、動物の情動性の測定に用いられるテストの1つであり、移動活動量と排泄数が主な指標として用いられる。しかしながら、マウスはオープンフィールドに入れられたとき、恐る恐る伸張して周囲のにおいを嗅いだり、立ち上がって周りを見渡したりと、実に多彩な行動を示している。本研究ではこれらの詳細な行動についても観察を行うことで、各系統がそれらの行動パターンについても実に多彩な特徴を持つことを明らかにした。今後、オープンフィールド行動が大幅に異なった2系統、MSMとC57BL/6Jについて作成されたコンソミックマウス系統を用いて、オープンフィールド行動の更なる解析を行っていく予定である。(プログラムへ)
 
丸山 正樹・木南 凌 新潟大学教育研究院医歯学系遺伝子制御講座分子生物学分野
「放射線誘発マウス胸腺リンパ腫の感受性遺伝子Mtf-1の同定」
 発がんリスクを左右する遺伝因子は「古い起源をもつ、ありふれたアレル」に由来すると考えられており、ヒトの大規模実験が進められている。しかし、遺伝的相互作用の存在が示され、QTL解析の複雑さ・困難さが指摘されている。モデル動物は連鎖不平衡解析でどこまで感受性遺伝子を捕捉できるかを推定することができ、ヒトQTL解析の補完的役割をもつ。我々は、放射線誘発マウス胸腺リンパ腫モデルを用いてリンパ腫発症頻度に影響する系統差の解析(連鎖不平衡解析)を行い、がん感受性遺伝子Mtf-1を同定した。Mtf-1は、放射線暴露を含めたストレス応答遺伝子であり、ラジカル・スカベンジャーであるMt1や、抗アポトーシス作用を持つPlGFなどの発現を制御する。それゆえ誘導効率の高い系統では、放射線効果を減弱させ、放射線発がんに抵抗性を与えると考えられる。また、マウスの生息分布調査からも2種類のアレルの起源が古いことが示され、当初の仮説に合致することが分かった。以上から、ありふれたアレルに由来するヒトMTF-1多型は、診断用X線被爆による発がんリスクや放射線治療後の続発性悪性腫瘍に影響を与える可能性が示唆される。(プログラムへ)
 
高林 秀次・加藤秀樹  浜松医科大学医学部附属動物実験施設
「クローズドコロニーマウスに内在する自然突然変異遺伝子の探索研究」
 我々はクローズドコロニーマウスに内在する突然変異遺伝子を効率的に探索するシステムを開発した。具体的には、Jcl:ICRオスとDBA/2JJcl(D2)メスの交配から得られるF1メス4頭をランダムに選びICRオス親に戻し交配を行った。各メスから約30頭の戻し交配仔を得て、約1ヶ月でそれらの表現型を観察した。これまでに、約40匹のICRオスを用いて戻し交配を行った。
 現在までに、5種類(後肢麻痺、矮小、2種の歩行異常、腎臓異常)の劣性と思われる突然変異遺伝子が見出された。これらはICRオスが本来持っていた劣性遺伝子がホモ型となって顕在化したと考えられる。この中で最も解析が進んでいる矮小マウスはヒトの甲状腺機能低下症、後肢麻痺マウスは脊髄原性の筋疾患のそれぞれモデルである。これらのことから、我々が開発した交配システムはクローズドコロニーに内在する自然突然変異を疾患関連遺伝子資源として探索する有用な方法であることが証明された。(プログラムへ)
 
田中宏光 大阪大学 微生物病研究所 動物実験学
共同研究者: 井口尚子, 外山芳郎*, 喜多村晃一, 高橋徹, かせ田一宏, 前川眞美子*, 西宗義武
*千葉大学 医学部 発生・再建医学研究部門
「精子鞭毛蛋白質Tektin-t遺伝子欠損マウスの解析」
 日本・欧米諸国においては現在、10組に1組以上のカップルが不妊に悩まされており、その半数は男性側に要因があると考えられている。幾つかの遺伝子変異が男性不妊を引き起こすことが明らかにされているが、未だ数多くの原因遺伝子が存在するものと考えられる。精子細胞特異的遺伝子を同定し、その翻訳産物の機能を明らかにすることは男性不妊症の分子メカニズムを理解する上で重要である。我々が、マウス及びヒトtektin-t遺伝子の単離と解析を行った結果、tektin-t遺伝子は精子鞭毛に重要な蛋白質であると推察された。Tektin-t蛋白質はウニからヒトまで広範な種の精子鞭毛に局在するtektin蛋白質ファミリーの1つである。Tektin蛋白質はチューブリンとの相互作用が示唆されており、鞭毛内の微小管に結合し、屈曲運動する鞭毛構造に強度を与える等の役割を果たすと考えられている。今回exon-trap法により得られたtektin-t遺伝子欠損マウスの解析を行った。tektin-t遺伝子欠損マウスは精子鞭毛の形態及び運動性に異常が認められ、雄性不妊を示した。また、鞭毛の電子顕微鏡観察の結果、鞭毛のinner dynein armに異常が見られた。このことからTektin-t蛋白質は鞭毛のinner dynein arm形成、形態維持に重要な役割を果たし、精子形態異常や精子運動能低下などを引き起こす原因遺伝子の候補の1つである可能性が示唆される。(プログラムへ)
 
吉田 松生 京都大学大学院医学研究科 病理系 腫瘍生物学講座
「未分化型精原細胞の可視化と系譜追跡によるマウス精子形成の解析」
 私たちは、マウスの精子形成幹細胞活性を持つ細胞集団である未分化型精原細胞に特異的な遺伝子として、ngn3 (neurogenin3)を同定しました。その制御領域を利用して未分化型精原細胞をGFPにより可視化、あるいはCreリコンビナーゼにより遺伝的にラベルするトランスジェニックマウスの実験系を作りました。これらを用いた解析の結果明らかになってきた、未分化型精原細胞の精細管内での形態や挙動、分化能について議論したいと思います。(プログラムへ)
 
山縣 一夫 筑波大学大学院生命環境科学研究科
共同研究者: 山下美鈴、山崎大賀、小口 憩、丸山靖子、馬場 忠(同所属)
「バイオイメージングによるマウス受精卵子内イベントの可視化」
 受精の際、第二減数分裂中期で細胞周期を停止させていた卵子は、精子の侵入によって活性化を受ける。その結果、様々な形態的変化に加えて雌雄ゲノムの再プログラム化や細胞周期の再開、前核期における遺伝子の新規転写といったドラスティックな活動を開始する。これら受精卵内に見られる様々なイベントは体細胞クローン動物作製の成功により個体発生という意味においてバイパスされ得ることが示された。しかし、その発生率は極端に低く、例え発生しても様々な異常が見られていることから、改めて受精卵子内イベントの基礎的研究の必要性が生じている。配偶子に関する研究はその量的な問題に加えて、卵子のheterogeneity(不均一性)が原因となるさまざまな実験上の問題から、分子レベルでの解析が困難である。そこでわれわれは特定の卵子についてその受精前後に起きるさまざまな現象を非破壊的かつ分子レベルで観察するバイオイメージング技術の開発を進めている。本研究会ではこれまでに得られた知見に加えて現在進行中の研究についても議論し、皆様のご意見、ご批判をお聞かせいただければと考えている。(プログラムへ)
 
金田 正弘・佐々木 裕之  国立遺伝学研究所 人類遺伝研究部門
「ゲノムインプリンティング確立におけるde novo DNAメチル化酵素Dnmt3a,Dnmt3b の役割」
 ゲノムインプリンティングは,父・母由来の対立遺伝子の一方だけが発現する現象である。この由来に関する遺伝子の記憶(インプリント)は,体細胞では受け継がれるが,始原生殖細胞では一旦リセットされ,その後の配偶子形成過程で個体の性に応じて再び確立される。配偶子形成過程におけるインプリント確立機構を調べるため,de novo DNAメチル化酵素Dnmt3a, Dnmt3bをCre-loxPシステムを用いて生殖細胞特異的にノックアウトした。その結果,Dnmt3bの生殖細胞特異的ノックアウトマウスは明らかな表現型を示さなかったが,Dnmt3aを雌性生殖細胞でノックアウトすると母性インプリントが確立されず,胎仔はすべて胎生中期致死となった。また,雄性生殖細胞でDnmt3aをノックアウトすると無精子症を示したが,残存する精原細胞を解析したところ父性インプリントの欠失が認められた。これらの結果から,DNAのメチル化が配偶子から次世代へと受け継がれるインプリントであること,またその確立にはDnmt3aが主要な働きをすることが明らかとなった。(プログラムへ)
 
河野 友宏 東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科
「雌核発生マウス誕生へのアプローチ」
 ほ乳類の個体発生には雌雄両ゲノムの寄与が不可欠である。これは生殖細胞形成過程で行われるゲノムインプリンティング(GI)により,雌雄ゲノム 間で相反する発現をするインプリント遺伝子が存在するためと考えられる。これまでに我々
は,核移植技術を用いてGIを受けていない非成長期卵母細胞ゲノ ムと成熟卵子ゲノムからなる雌核発生胚を構築し,インプリント遺伝子の発現を調節することにより,雌核発生胚が発生延長することを明らかにしてきた。し かしながら、それらの単為発生胚では、父方インプリント遺伝子の発現には改変が生じない。そこで、さらに発生延長を誘導するために、遺伝子欠損マウスを 用いることにより、父方インプリント遺伝子である母性発現H19 遺伝子および父性発現Igf2遺伝子の発現調節を試み、単為発生マウスを誕生させることに成功した。ここでは、これまでの研究の経過と併せて、その成果の概要を紹介する。(プログラムへ)
 

このページのトップへ